「日本的業務慣行」と「業務パッケージのベストプラクティス」


日本の大企業にはホワイトカラーの仕事を標準化しない、という信念、もしくは伝統がある。そこでは、業務用パッケージの導入が不可能なくらいに、柔軟、場当たり的、独自のやり方で業務をこなすのがその特徴であり、これが生産現場に比べて圧倒的に生産性が低いと言われる我が国のホワイトカラーの特徴だ。

「業務用パッケージの導入が不可能」というと、むしろ生産現場のことではないかと私は思います。よく聞く話としては、下の事例のように



トヨタ流生産管理とR/3が前提にする生産管理とが相入れるものかどうか、プロジェクト開始前に慎重に検討する姿勢がノーリツにあれば、その後の展開は全く違っていただろう。

のように、生産管理業務が「業務用パッケージの導入が不可能」とジャッジされるケースが多いように感じています。

市場調査、シェアなんかを見ても、



生産管理パッケージの評価については,「自社製オーダーシステム」が6割近く利用されており,個々の製品のユーザー数が少ないので参考値程度に考えてもらいたい。


国産製品は海外製品に比べ、現場のニーズに即した機能改善が図られており、支持を集めた。

という感じで、生産管理分野は手組み(スクラッチ)システムが多く、またSAP, Oracleに代表される外資ERPパッケージより、「現場のニーズに即した機能改善が図られ」ている日本製パッケージのほうが強いという結果が数字にも表れています。

そもそも、(経理のような)ERP が比較的スムーズに導入できてしまうような分野、パッケージシステムと一般職・派遣の人だけでこなせるような定型業務はそもそも本当に「ホワイトカラー」なんでしょうかねぇ? 工場所属で作業服を着て仕事をしていたとしても、生産管理や製品設計に携わる社員のほうがよっぽど「知的労働者」と言うにふさわしいと私は思います。

「日本的業務慣行」と「業務パッケージのベストプラクティス」は相反する面がありますが、どちらかが一方的に優れているという訳ではなく、会社、部門毎に適材適所なんですよね。「業務パッケージのベストプラクティス」にこだわるあまり自社の強みを殺してしまい「角を矯めて牛を殺す」ような結果にならないようにだけはしたいものです。